ファイアパンチという漫画


藤本タツキさんが描かれた
「ファイアパンチ」という漫画が………

すごかった!!!!!!!!!!!!!!!

やぁ~~……すごかった!!!!!!!!!!!!!!!

きっかけは、私が好きで好きでどうしようもない「青野くんに触りたいから死にたい」という漫画の著者である椎名うみさんが、藤本タツキさんのチェンソーマンやファイアパンチについてツイートをしていたのを見かけたことでした。
(椎名さんのツイートが好き過ぎて泣いたことがあるくらい椎名さんの作品とご本人様の重度のファンです)

チェンソーマンも気になったのですが、ファイアパンチは完結しているというのもあって、ひとまずこっちから読んでみよう!と思い三巻まで買って読んだんですが…
もう、もう…すごくて…すごかった………。あまりの地獄と無慈悲さに泣きたいのに、ガンガンに泣かされたいのに、漫画の中の世界と読んでいる自分の距離があまりに遠くて途方もなくて、熱いのに突き放されて、激しいのに凍るくらい冷たくて、だから泣きそうになると「なに泣いてんの?」みたいに漫画に言われてる気がして、寒暖差に頭がクラクラする感じでした。
最高でした。…最高でした……。

主人公のアグニは全身が燃えたまま生きてる(死ねない)という設定で、全身が燃えたまんま、ずっと痛覚を携えたまんま生きてるんです。こんな地獄が…あっていいのかよ…。
この慟哭みたいな地獄が、一巻読み切りとかじゃなくて八巻まで続くことがすごいし、それを描き続けることができる作者さんに鳥肌が立ちました。信じられない…すごい…。
最初からクライマックスの地獄なんですけど、なんでか淡々としてて、メチャクチャなのに世界に説得力があってだけど登場人物たちの感情はどっか死んでて、読みながら「すごい映画を見終わった時の呆然感」がずっとついて回るんです。現在進行形で読んでるのに…見終わって放心してる時の気持ちなんですよ…なにこれ不思議すぎる…。堪能してる最中、その世界に没頭したいのに「自分は今、漫画という娯楽を消費しているだけ」というのを意識させられちゃう感じというか。
突き放されてる感じが、ほんのり「ファニーゲーム USA」という映画に似てるかな、とも思ったんですが、主人公のアグニを好きにならずにいられない分こっちの方が救いがなくて苦しいかもな…。

アグニがどんなに好きでも、どんなに救われてほしいと思っても、読んでる私は絶対にこの地獄に行けないし手も届かない。あまりに無力であまりに傍観者なんですよ。そしてアグニの言葉や行動に感動する度、アグニの生き様を結局娯楽として見ているだけの消費者であることを突きつけられるんです。
アグニが好きです。物語の主人公として。世界を救うヒーローとして。それはつまりアグニを漫画という作品の中のキャラクターとしてしか見ていないということであって、こんな人が実際に同じ世界で生きていたら苦しくて辛くて耐えられる訳ないし、あ~だからやっぱり漫画でよかったって思ってる、読者という消費者なだけの存在なんです。私は。
それをっ…!そのことをっ…ホンットにこの漫画は、いちいちっ…突きつけてくるっ………!!!
せっかく出かけた涙も引っ込んじゃうんです。「いやお前ただの消費者だろ世界観に浸ってる自分に酔ってんのか?おつ笑」みたいなセルフツッコミが入るから!!!!!
「トガタ」という映画大好き映画狂のキャラクターが一巻の終わりから登場するんですが、彼女(多分女性。多分だけど)の台詞はこの漫画と読者に都度境界線を引いていきます。
「私はアイツが好きだから、アイツが負けて苦しむところをカメラに撮りたい」みたいなことを言ったり「アイツがいくら頑張ったところで、バッドエンドなんだよな~」って言ったりするんです。
それは読者である私も心の奥で望んでいることで、アグニに救われてほしいと思う反面、アグニが苦しめば苦しむほどこの漫画の「クライマックス度」は上がるんですよね。つまり「面白い」んですよ。こんなにこんなに好きなのに、アグニがもがき苦しむ様を読んでいられるひと時は、読者として嬉しいひと時なんです。
トガタは目を輝かせながら「なんでもありなんだ。面白ければなにしてもいいんだよ。映画は」とも言います。
それが真理で、全てなんだよな…と思いました。だからファイアパンチという漫画はメチャクチャで、なんでもありで、だけど最高に面白いから「いい」んです。最高です。
ホラーもバッドエンドも奇妙も不思議も地獄も、それが作品として存在してる限り面白かったらなんだってありで、私たちは自分の「好き」と出会うため小説を読んだり映画を観たり漫画を読んだり音楽を聴いたりする。
そのうえで導き出される答えは、大好きな漫画に出会えて、私はメチャクチャ幸せだ、ということです。八巻までアグニを見れることがメチャクチャ嬉しいです。

あと、話は変わりますが作中みんなガツガツとタバコを吸うので、それが個人的にメッチャ好きです。喫煙姿は特にユダが綺麗でかっこいいので、喫煙描写萌えの人(←あまりにニッチでは?)はそこもすごく楽しめると思います!
アグニは…燃えてっから…吸えないね……タバコ似合いそうなのにね……。

四巻以降を早く読みたいのですが、昨日本屋に行ってくれた家族が「なかった」と言ってて、超ショックでした…。ネットで調べても「売り切れ」の文字ばかり…!つらい。

とにかく「やばい」「異様」という言葉がよく似合う素晴らしい漫画です。滅多なことでは新刊で漫画を買うことがないんですが、これは新刊でも良い、読みたい、この異彩を放つ天才にお金を払いたい、と思えた漫画です。
なんで売り切れ!?!?買わせて!!!!!

作者の藤本タツキさん、ツイッターやってるのかなと思って検索してみたら全く別名のたぶん架空の小学三年生の女の子になりすましてツイッターやってて、めちゃくちゃ過ぎて笑ってしまいました。ホントめちゃくちゃすぎるな!!!!!!

帯のアオリに「ダークファンタジー」と書いてあったので、この漫画のジャンルはダークファンタジーらしい…ダークファンタジー…そうか…ダークファンタジー…これダークファンタジーって言うのか?
(でもホラーともヒューマンドラマとも違うし、強引にカテゴライズしたらやっぱりファンタジーなんだろうな)

とにもかくにも、最高です。映画好きな人は一層楽しめるんじゃないだろうか。
途方もない距離を突きつけられながら、早く続きを読みたいです。



生姜