太一くんが満開かんぱにーにしてしまった事を、ちょっと掘り下げて考えていました。ここ最近。
太一くんがしたことをまとめると、脅迫状を数回にわたって出したこと、衣装をメチャクチャに切り裂いたこと、小道具を隠したこと、ですよね。
この中でやっぱり、一線を超えた嫌がらせって衣装かなと思うのですが(小道具も、なんかギッタギタに壊したうえで、用意してくれた迫田くんがそれを見る、とかだったら一線を超えているかもしれない)、それについて太一くんはどう感じて、どう考えているのだろう。と、なんの意味もなく妄想していました。
メインストの冒頭では太一くん、笑顔で「演劇経験はないッスー!モテたくて来ましたー!」って言ってました。自ら「演劇経験なし」を発言したという事は、この時点で満開の人たちを騙す気でいたという事だから、スパイ目的で入団したのは間違いないんじゃないかな?と思うんですけど、この頃って太一くん、カンパニーの人たちのこと誰も知らないし好きでもなんでもないから、上手に笑ってしれっと嘘がつけたと思うんです。
太一くん、GOD座であまり人との良い関係を築けなかったのではないかなぁと何となく感じるのですが(神木坂さんの人柄も分かっているでしょうし。他の劇団を潰そうとかそういう事考えてる人なんだなあって)、そういうのを経てしまったからこそ、「演劇の世界なんて」みたいな、どこか冷めた気持ちが芽生えていたんじゃないかなぁ。「どうせみんな、人を蹴落とすことばっか考えてんでしょ?」みたいな。
とにかく、カンパニーのみんなのこと、好きじゃなかったと思うんです。むしろ「自分以外はみんな嫌い。みんな敵」って、思ってたと思うのです。
そこからストーリーは進んで、いよいよ太一くんが妨害を行動に移します。
脅迫状出すあたりから、もう既に太一くんは「ここの人たちってGOD座の人たちと全然違う」って感じてたんじゃないでしょうか。みんな一生懸命で、ワンフォーオールオールフォーワンなんだって。だから、そういう人たちに水を差してる自分が嫌だ、っていう気持ちはあったんじゃないかと思います。でもまだ「みんなが好き」まではいかなくて、あくまで「いい人たち」という認識だったんじゃないかと。
それが、稽古を積んで、初段階のメンバーのポートレイト見て、みんなと寮生活を過ごすうちに、「あれ?俺、みんなのこと好きになってきてる」って感じ始めたんじゃないかなあって思います。それは太一くん自身にとって想定外で、たぶん咄嗟に「やばい」って感じてたんじゃないかなぁ…。
衣装を切り裂いた辺りの頃は、秋組のみんなのことはもう「好き」になっていたと思います。でもまだ他の組のみんなのことは「好き」とまではいかなくて、衣装を作った幸くんに対して「ごめんなさい」の気持ちはあれど、実行に移せてしまえた。(ここが太一くんの罪の、一番大きな分岐点だと感じます)
その後、公演中に小道具を隠しても、それでもカンパニーのみんなは結束して、一丸となって、公演を成功させて。太一くんの妨害が実を結ばない。こんなに苦しい事はないはずです。もう折れてくれよって、公演諦めてくれよって、何度も思ったんじゃないでしょうか。そのうえ、頑張ってるみんなの輪の中に自分は入れない。心から苦楽を分かち合うことができない。自分の妨害を懸命に乗り越えていくみんなを見ながら、太一くんの苦しい思いは続きます。
そして太一くんはそんなみんなを見ながら思うんです。「これが仲間なんだ」「なんて素敵なんだろう」「みんなのことが、俺大好きだな」って。この辺りで太一くんは、カンパニー全員のことを「大好き」になったんじゃないかなって思うんです。
だからこそ、自分の罪を振り返ることは彼にとって恐怖だったに違いない。行動に移していた当時はこんなにもみんなが大切ではなかったから、自分の夢を優先してしまえた。最低な行為もできてしまえた。今の自分じゃ絶対にできない。幸チャンの作った衣装にはさみを入れるなんて、秋組のみんなの公演を邪魔するなんて、カンパニーの人たちを裏切る行為なんて、できるわけない。そんな風に思って、両手が震えたりしたんじゃないかなって。
全部やってしまった後にみんなを好きになってしまったから、これからもずっと太一くんの中で「消せない罪」は重たく鎮座していると思うのです。みんなを好きだなぁって感じるたびにそれがフラッシュバックして、こんなにも好きな人にあんな最低なことをしたんだって、何度も思い知って。
好きになる度に罪の意識は重たくなって、これからもずっと太一くんを苦しめる。好きになる程、太一くんは昔自分がした事が怖くなる。
だからあの時の「ごめんなさい」より今もっと深く「ごめんなさい」と思っているだろうし、日が経つごとに、風化されず、むしろ反比例のように苦しみが増えていくんじゃないかなぁ…。
メインストを読んでいて、秋組みんなが太一くんのしたことを許したところ「いや簡単に許しすぎだろ!」ってちょっと思って、非現実的だなぁと感じたのですが、あの時謝る対象が夏組だったらまた違っていたのかもしれません。
天馬くんなら「幸に土下座しろ。してくれ」くらい言ったかもしれないし椋くんは「…なんであんなひどいことができたの…?」って泣いたかもしれない。
だって例えば、他の組の誰かがスパイだったとして、太一くんが夜なべして作った衣装を切り刻んでいたら、それを聞かされた万里くんや臣くんは「土下座しろや」くらい、言うんじゃないかと思うんです…。太一くんのしたことは、それほどまでに大きい。
(千秋楽後の天馬くんの反応がちょっと薄口だったなぁ…と個人的には思います。十座くんより更に厳しく、太一くんに言って欲しかった…かもしれない><)
実は私も、身に覚えがあります。
大好きな人たちをたくさん傷つけて、自分の為だけに生きていたことがありました。
当時はそんな自分に自覚がなくて、悪びれることも躊躇することもなく、傍若無人に振る舞っていました。
自分のしていることに気付いて、気付いてから恐ろしくなりました。取り憑かれていたみたいだった、本気で頭がおかしかったって、すごく思います。
その人たちのことが今も心から大好きなので、私は思い返す度に当時の自分が恐ろしくなりますし、時を戻せないことが悔しくてたまらないです。この気持ちは、みんなを大好きだと思っている限り絶対に消えないし、日を追うごとに鮮明になっていくのだろうなと思います。
大好きな人に、あんな酷いことができてしまえた。何一つ消せない、恐ろしい事実です。信じられない、頭がおかしいと、これからも何度も自分のことを思うだろうし、その度に恐怖も感じると思います。
消えないものを死ぬまで背負って、本当にごめんって思いながら前に進んでいく。しんどくて泣きたくて、怖い。
そういう道を、太一くんは歩み続けていくような気が、私はします。それが今後、作中で少しも語られないとしても。
…随分長くなってしまった…!
生姜
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